さりげなくニュースNo.305

「アメリカの悲しみ」

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 大戦争を想定した場合には、やはり地上戦としての陸軍が主力となる。

 現在ヨーロッパに駐留するアメリカ軍はドイツで3万人強である。この数字は2011年の5万人強からはだいぶ減少している。極東の要であるわが国や韓国には、合わせて5万人が駐留している。ドイツに駐留する本音はロシアの排除とドイツを守るとともに歯止めである。同じようにわが国への駐留は、わが国の軍事力に蓋をすること、再び敵として立ち向かわないように歯止めをかける意味が大きい。

 4月14日、イギリスとフランスの参加のもと、アメリカはシリアに向けてミサイル攻撃をなした。ここにはドイツが参加していない。おなじようにイラク戦争には、ドイツのシュレーダーはイラク戦争反対の論陣を張って再選された。わが国の小泉首相はイギリスとともに諸手をあげて賛成の側に回った。プードルと馬鹿にされたのが印象に残る。

 今回のトランプによるミサイル発射には多くの意味が込められていると見たほうがいい。一つは最終的にロシアを怒らせるところまではいかないように、手立てが講じられているということ。今一つはトランプ特有の戦術である過激の頂点まであおり、軍産にイガイガをかけ、最終的にはすんなりとシリアから撤退するという、限りなく国内問題という視点である。そもそも三年前シリア攻撃を躊躇したオバマの時点でアメリカは実質的にシリアから手を引き、ロシアに任せたのだ。それがいまさら未練がましいという印象がもたれかねない。 アメリカが後押ししている反政府勢力、ISIの最後の拠点グータ地区のドゥーマという町から、反政府勢力は駆逐され、残党は続々とトルコ側に避難している、敗北がほぼ確定の状況が4月7日、化学兵器で死者が出たという時期である。アメリカは、化学兵器という言葉の大義名分を得て、ここぞとばかり4月14日にミサイル数十発を軍事施設に打ち込んだ。

 今回の軍事行動からアメリカの実態が少しながら見えてくる。小粒になったアメリカというイメージである。所詮アメリカの軍事的実力とは悪の枢軸と命名した弱小国を攻めるのに精一杯で、大国とがぷり四つに向き合う実力はないと。そこから敷衍されることは、アメリカが力をもっているというのは幻想にしかすぎず、ソ連崩壊によるものだと。また資金の力についてもグローバルゼーションの成熟段階における膨大な資金が、アメリカに入り込んだことによる実体に見合わない資力を与えられたに過ぎない。アメリカは20年前に自国の産業に投資すべきであった。いまからでも遅くはない、そうすべきだというおせっかいがまかり通る、バブルの崩壊も間近かなのかもしれない。

 中近東に関する戦略上の真の問題とは、中近東の諸国をヨーロッパの貿易、金融上の影響範囲に属させるか、それとも軍事的にアメリカに属させるかに帰着する。

 それにしても戦後アメリカのシステムの要である、ドイツの支えを失ったことは、アメリカの大きな悲しみであるとともに、もう一方のわが国が、あまりにも理不尽な朝貢を強いられることによる、同盟そのものを後退させかねない局面も、悲しいことに違いない。

 

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