さりげなくニュースNo.276

アメリカへの経済制裁は近々ありうるか。」

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アメリカに経済制裁を加えるといった国際会議での決定がなされた。こんなニュースが世界を駆け巡ったことはなかったし、近々では起こりそうも無い。アラブの国々の動乱を引き起こした張本人である、アメリカはかつての力強さはないものの、世界を黙らせる力をいまだに失ってはいない。ただ、1950年代のあの寛大な兄貴的な慈愛に満ちた姿はどこを探しても見当たらない国になってしまった。今では世界に害毒を撒き散らす餓えた狼の印象だ。

  新大統領のトランプ氏は就任演説でイスラムテロをこの地球から根絶すると発言するものの、非対称戦争の結果としての9.11、アメリカのビル爆破といったテロリスト側の大成功や、個々のテロの頻発がありえることを理解していない。また、永遠の問題であるアメリカ、イスラエルとの特殊な関係に端を発したアラブの憎しみも理解不能な事柄である。

 イラク戦争はアメリカにとって一定の成果を得ることができたのか。いみじくもFRBのバーナンキン氏がこの戦争について、アメリカの石油への関心ということに言及していたが、奥深い所はアメリカの国際社会での生き延びという視点がからんだ事柄と理解しうる。

 アメリカという国は日に12億ドルという消費水準を維持するためには外から援助金を貰う必要ある。だから自分だけでは生きていけない国になっている。どの国でも対外収支のバランスのなかで生きている。そうなると国民の生活水準は二割近くまで低下をよぎなくされることになる。

 イスラム、アラブを軍事的に攻め込むアメリカの戦争は劇場型と峻別できる。その戦争の目的はある面では成功したかに見えるものの、後遺症の方が大きかった。第二次世界大戦でコテンパンに恐怖をどん底まで植え付け、保護領として、72年間も成功裏に関係付けた、強国であるドイツと日本の反応である。

 二大強国ドイツと日本は、このアメリカの中東への攻撃をどう見たか。また何に恐怖したか。それはアメリカによる石油支配がドイツと日本に向けられてきたと感じ取ったはずだ。このことは日本の生き延びる知恵として当然、資源大国ロシアへの接近となることは明白である。現在のロシアの存在意義は、恐怖の核均衡としてアメリカの凶暴な行動を制御できる唯一のポジションを確保している。それに本来の外交における巧者の一面を発揮しはじめている。

 わが国の直接投資はアメリカがダントツであった。ヨーロッパは半分に過ぎなかった。それが、2000年、2010年には逆転し、ヨーロッパへの直接投資は急増した。

 アメリカが恐れることは、経済の中心がユーラシアに移りアメリカが蚊帳の外に放りだされることだ。物品と通貨と人の流れが枯渇する恐怖である。ついで、ユーロという通貨が加盟国の予算をも統一しEUの意思決定がスムーズになるとき、これまで世界に対して唯一貢献してきたアメリカのケインズ政策としての需要創出機能も譲り渡すことになる。

 イギリスのEU離脱は、ロンドンの金融市場がユーロ圏から取り込まれることを回避できたということでアメリカにとっては、胸を撫で下ろすこととなった。

 

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