さりげなくニュースNo.249

「原油されど原油」

サウジの通貨リヤルの動き



イラン、ベネズエラ、イラクと三国を並べてみると、思いあたることに気づく。

 前二者はガリガリの反米国家である。

イラクは言わずと知れた、アメリカに対して傲慢な国家であった。

 これらの国々は、ドルの使用からユーロの使用に切り替えた仲間である。正確には、イラクに関しては、ドルを離れて、石油の決算はユーロにすると、前二者に協調する発言をした途端に、その張本人であるフセインはアメリカによって武力攻撃をされた。

 もしもという仮定の話を持ち込んで見るとどういう展開になっていただろうか。

 30年来、ただ一途にドルにペックし続けてきたサウジアラビアの通貨リヤルが、明日から私どもはドルにペックすることを止めます。それに付け加えまして石油の決算通貨はユーロに切り替えますと、サウジアラビアが三者の仲間に加わったとしたら、アメリカの展開はどうなっていただろうか。歴史を撒き戻して見たい誘惑にかられる。

 この4日にOPECの会議が開催される。減産体制を決めて原油の供給を減少させることにより、原油価格の上昇を狙うのか。それとも、各国の国内事情によりそんなことは出来ないとなるのか。

 オイルに依存する国家であるロシアは、現状のバレル50ドルにどう向きあっているのか。どのような緩衝手法で対処しているのか。

 ロシアのルーブルはドルに対して当初32ドルであったが最近では65ドルに切り下がっている。このことは、石油以外の産業の競争力が高まり、原油価格低迷の分を補う事ができる。

 はたしてサウジアラビアの場合にも同じことが言えるのだろうか。サウジアラビアは、財、サービスサービスの貿易額の対GDPに占める比率は約80%近くになっている。わが国の25%、アメリカの23%とくらべても異常に高い値を示している。それが単一商品である石油に依存しているとするならば、石油価格の下落を他で補うという発想は出てこない。

 サウジのこの経済の体質が、これまでに30年間もドルにペックし続けた要因である可能性がある。

 原油価格の下落とともに、サウジの外貨準備高も急激に減少に転じだしてきた。ブレンド産オイル価格がバレル30ドルになるとサウジの外貨準備高は月に約2兆円減少するという試算がある。ちなみにサウジのGDPは280兆円である。わが国の半分強である。

 このまま外貨準備金が減少していくとき、それに輪をかけるように資産価値が目減りしようものなら、さすがのサウジも政策の変更に重い腰を上げざるをえなくなる。それはドルがゼロ金利を続け、ますますドルの価値が下がりだした時に、ドルとのペックから離れ、金融政策の自由度を取り戻す方向に政策転換をすることが考えられる。

 当面の方向性としては、原油の供給カットによる方がデバリュウション(貨幣価値の減少化)よりは政治的には、やり易いというのは確かであろう。

2015.12.06 by K.Wada

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