今の苦境を乗り切れるか。プーチン。」



 

K.Wada 2015.1.18

 このタイミングで原油価格が下がり続けている。どう考えても異常だ。特にロシアの自信と誇りを粉々に打ち砕いてしまうほどの原油価格の暴落だ。
 
 11月27日、OPEC石油輸出機構は、原油価格を維持するための減産という手段をとらない事を決定した。
 
 OPEC主要国であるサウジアラビアの意思が反映していることは考えられないか。OPECの構成国であるUAE、クウェートは原油収入が数年赤字であっても外貨準備には困らない。一方、このような原油価格暴落で一番困るのは、暴れん坊のベネズエラが真っ先にあげられる。1バレル50ドルなどは論外で、今や反政府運動の火蓋がきられようとしている。
 
 次いで困る国は、ロシア、イラン、イラクである。
 
 
 これらの顔ぶれで気づくことがある。イスラエルとの関係で、中東の大国となりえるイランは、これ以上強い国になってはいけない国である。イラクは、近い将来イランに取り込まれる国でもある。一方、ロシアは、最近の原油価格安定に慣らされ、国家財政は安定し、国防費の規模はうなぎ上りに高まってきた。その反動で、クリミアの併合、ウクライナ侵略と、軍事的冒険に出始めている。
 
 
 原油価格の低下するに任せている大きな理由の一つに、シェールガスに関するものがあった。
 
 サウジアラビアなどは、アメリカのシェールガスの存在に危機感を抱き、ライバル意識丸出しのシェール潰しに出ていると喧伝されている。しかし、この問題は、サウジとアメリカの出来合いレースであることを疑って見る価値は十分にありそうだ。
 
 
 ロシアの苦境は筆舌に尽くしがたい状況であることには変わりがない。だが1998年に経験したデフォルト、債務不履行が、今回すぐにやってくるのかと言えば、そうではない。現在、ロシアは、欧米からの経済制裁を受けて、国際資本市場から排除されている。ロシアの民間と国の対外債務は$654bn、日本円にして約72兆円である。単純に、月に$10bn返却しないといけない。外貨準備は減らしたとはいえ$388bnは留めている。この一年間で$511bnから減らした額である。
 
 ルーブルを守るためにすさまじい介入の戦いをしている。これまで1ドル30ルーブルだったものが12月中旬には60ルーブルまで値を下げた。一般市民はドル建てで輸入した品物をこれまでの2倍の値段で買うことになる。二桁のインフレを覚悟しなければならなくなった。こんななか政策金利は10.5%から17%に上がった。これでは、まともな企業活動が出来る状況ではない。
 
 ルーブルが紙くずになる前にドルに変えようとする動きがでてきた。8月の欧米による経済制裁以来、外国の投資も減少し、資本フライト、逃避は850億ドル、日本円にして約10兆円となっている。
 
 このロシアの経済状況は、ロシアと緊密な関係にあるベラルーシ、グルジアにも伝染しつつある。
 
 ロシアの信用不安はCDS(credit default swap)指数で6倍に高まっている。
エネルギー部門の収入が国の過半を占め、輸出収入の三割が原油、七割が燃料、エネルギーとなっている。経済戦争を仕掛けられたら、飛びっきり弱点が見え出してくる。
 
 原油価格が10ドル落とすと、輸出収入はGDPで2%の減となる。


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