プーチンのロシア重大な岐路にたたされる】
2014.8.10


 

K.Wada 2014.8..10

 アメリカとの冷戦に敗れたロシアにとって冷戦後の体制は、必ずしも居心地の良いものではなかった。第二次大戦の敗北国であるわが国がおもしろくないように、ロシアはもっとおもしろくないのかもしれない。
 
 冷戦終結前のロシアの地政学的領土はヨーロッパの半分を我が物とする広大なものであった。それが今にしてどうだ。かつて連邦の一員であったウクライナがNATOに加盟しようとする動きに出ている。プーチン氏にとっては、これだけは、どんな犠牲を払ってでも阻止しなければならないと思うのは至極当然である。
 
 NATOというかつては敵として相対していたアメリカの軍事同盟にロシアの中庭の国が加盟することは許せるはずが無い。
 
 ここにロシアによるウクライナ東部への侵略が始まることになる。どんな理由付けをしようともアメリカは早々とその本質を見抜きロシア制裁を呼びかけた。EUはロシアとの経済関係が密接なフランス、ドイツがなかなか、本格的な制裁に踏み出せなかった。それがここにきてEUの徹底的な制裁が決定された。この7月下旬である。
 
 EUはロシア経済の全セクターに真の打撃を与える追加制裁に踏み切る決定をなした。
 
 ロシアは民間企業と民間銀行、それに中央銀行の外貨準備はほとんどがドルで721bnドルを保有している。この額は多いのか。とても多いとは言い切れない。2008年のリーマンショックの時は、中央銀行は半年間で200bnドル(約20兆円)を使い果たしている。
 
 オイルグループのRosneftはこの12月には巨額の借り換えが待っている。
 
 7月25日ロシア中央銀行は金利を8%に上げた。ルーブルの防衛のためだ。また資本の逃避を防ぐ意味もある。
 
 プーチン氏の火遊びはここに来て重大な局面を迎えることになった。むげにウクライナから手を引くことにより、強いイメージのプーチン像が壊れることは、とりもなおさずプーチン政権の崩壊に直結する危険性を孕むことになる。
 
 だが、ヨーロッパが本格的に制裁に乗り出した意味を過少評価するにはあまりにもリスクが大きすぎる。
 
 マーケットはどういう動きをしているのか。
ヨーロッパが本格的制裁を決定した時点で、ロシアのマーケットが崩壊し始める、奇妙な静けさが音を立て始めた。
 
 ロシア10年ものの債券は9.15%にジャンプした。
 
 新興国市場の不機嫌さが絶好調に達したかに見えた昨今、そこにとどめを刺すかのように、ロシアのデフォルトが視野に入ってきた。ロシアの資金導入は今後ますます困難さを増すことになる。
 
 現在のウクライナ情勢は政府軍が優位に戦いを進めている。
 
 4月中旬から7月下旬までの死者数は1,129人(国連人権高等弁務官事務所発表)。10万人の難民となっている。
 
 ウクライナ東部の民間武装勢力はアレクサンドル・ボロダイを首相にたて、ドネツク人民共和国を宣言している。戦闘集団はロシアからの戦闘武器で戦い、ロシアからは、GRU(ロシア軍参謀本部情報総局)、FSB(連邦保安局)、元KGB要員が入っている。ただ戦況は、ロシア側におもわしくなく、ドネツク、ルガンスクを中心とした東部の三分の二は、ウクライナ政府軍に制圧されている模様だ。

    

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