行動に出たわが国経済政策」



 

K.Wada 2014..12.07

 

 わが国の通貨膨張政策であるリフレイションは、大胆につき進められている。

 1930年代世界から孤立しつつある状況下、経済の再生に向け舵が切られた。これが高橋是清による、マネタリー革命であった。アベノミクスの一つの矢は、高橋是清を真似るかのように、しかも、なんでこんなに急ぐのかと、問いを発したくなるほどの勢いで、通貨膨張政策を突き進めている。

 1932年に舵をきった是清の政策は、世界から嘲笑の目でみられながらも、翌年には回復基調へと成果を出した。

 今回のアベノミクスにおける通貨膨張政策は、戦後の主要国では例を見ない、大変過激なものとして諸外国には写っている。

 この量的緩和政策QEのお手本はアメリカである。アメリカの中央銀行であるFRBの議長アラン・グリーンスバーンから始まり、前議長のベン・S・バーナンキ、そして現在の議長であるイエレンと続き、この10月には、6年間続いたQEに終止符を打つこととなった。債権バブルで見かけ上はかろうじて体裁を保ち続けているアメリカの経済数字は労働環境や株式市場において見違えるほどの改善がなされている。

 前バーナンキ議長の発言は示唆に富む。「QEは理論的には経済に効果がないはずだが、現実的には効果をもたらしている」。含蓄ある発言である。

 ながらくデフレに苦しんできたわが国の経済に、このたび過激なまでの貨幣膨張政策が打ち出された。

 一ヶ月平均7.5兆円を国債を初め債権の購入にあてがい、貨幣を増発し続けてきた。この日銀の方向性は、現在1%の物価上昇を記録している。日銀総裁の黒田氏は、来年の中頃までには、2%のインフレ率は可能であろうと自信をみせている。

 消費税5%から8%に上げたことによりQE政策は腰を折られることになったが、機械受注の数字はこの4ヶ月間上昇しつづけ9月には2.9%になっている。小売に関しても2.3%の上昇である。成長率についても、3%成長がこの冬にも達成できるであろうという見方がでている。

 その中でも特筆しうることは、失業率の3.5%という数字である。金融政策の醍醐味は失業率に集約されるといっても過言ではない。スペインの若年層の失業率は50%である。これは国の体をなしてはいない。民主主義を語る以前の問題である。

 黒田日銀当局は、もう一段の通貨膨張政策の補強に乗り出した。

 公然の秘密になってはいるらしいが、年金基金を株式市場に投入しようという試みである。デフレ退治への執念や並大抵ではなさそうだ。

 このアベノミクスには、消費税8%から10%への選択肢はなかった。第三四半期の経済減速がマイナス7%といった驚愕に値する消費税増税の悪影響を、目の当たりにして、どのような手段を使ってでも見送る必要があった。

 戦後メジャーな国ではなくなったわが国は、かくも過激な紙幣増発政策の実験に打ってでたことに、諸外国は固唾を飲んで見守っているはずだ。

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