さりげなくニュース2009.531(NO.91)


   イラク戦争はアメリカの敗北に終わり軍隊の撤退が日程に上っている。その撤退した分をアフガニスタンに向け始めている。
オバマ大統領は、テロとの最終決着地をアフガンに定めたように増派にこだわっている。
 
 [ワシントン19日時事]。オバマ大統領が打ち出した包括的戦略とは約2万1000人の増派と海兵隊1万人のアフガン南部への投入にあった。
 
 その結果、目論見としては、1〜2年で今まで、ここ3年間も劣勢であったアフガン情勢を立て直そうと意図するものであった。
 
 GDPの4%(欧州の主要国の2%と比べていかに多いか)の軍事費を使っている国がなぜ速やかにこの戦争に勝てないのか。むしろ、アフガニスタンでのアメリカの敗北が濃厚という見方が説得力あるものとして表面に出てきている。
 
 イラク戦争にはあれほど反対したフランス。アメリカとの関係がギクシャクするまでに、アメリカの言うことを聞かなかった。それがアフガニスタンとなるや、進んで派兵している。NATO軍の一員という立場ではあるが、フランスの変わりようは急激である。
 
 NATO(北大西洋条約機構)の設立は、共産圏を強く意識した軍事同盟であり、加盟国の一つが攻撃された時には反撃に出るという組織であった。だが現在冷戦の終結でワルシャワ条約機構もなくなり、NATOの目指すべき敵がいなくなってしまった。それにもかかわらず、かつまた、同盟国の一つが攻撃されたわけでもないのにNATO軍はアフガニスタンに攻撃する。これはNATOの本質が変容したと考えるしかない。NATOは、その利益が脅かされたとみるや、世界のどこにでも介入することができる。それも国連との協議がなくてもできると変容したととらえるしかない。
 
 そもそもアメリカはなぜアフガニスタンを攻撃する事になったのかを振り返らないと事の本質が見えてこない。
 
 湾岸戦争時、米軍はサウジアラビアに駐留した。アルカイダのオサマ・ビン・ラディンにはとても許せるものではなかった。
 
 イスラム教の聖地のあるサウジアラビアに異教徒が居座るとはなんたることだ。「米国にじわりじわりと死刑を」ということになる。それを許しておくサウジの国は転覆するに値する。
 
 アメリカにとってサウジは特別に利害のある中東の国家である。どんな犠牲を払ってでも守りきる必要のある国である。
 
 アフガン政策が変わるのはクリントン大統領になってからである。それまではこの地の安定のためにタリバンをサウジとともに支援してきた。安定政権は中央アジアの安定につらなるとして、アメリカのユノカルは中央アジアの石油、天然ガスをアフガン経由でインド洋に輸送することを計画していた。結果的には日の目を見ることはなかった。
 
 オサマ・ビン・ラディンを匿うアフガンのタリバンは同じテロとみなされ攻撃されることになる。アメリカの絶対的命令を受け入れない国家は懲罰を受けるという意味合いを含んだ攻撃という面は否定しえない。NATOの役割をアメリカの海外政策の侵略武力に作り変えるという目標は達成された。
 
 では、オバマでどう変わろうとしているのか。
 
 テロとの戦いは交渉相手もはっきりとは見えない終わりのない戦いという側面がある。そのことは、戦争を継続することに利害のある者にとっては、これ程に素晴らしい戦争はないはずだ。また、オバマには政策以前の黒人という自身の、身の危険からは完全に自由ではありえない。また、最強の圧力団体イスラエルの問題もある。