さりげなくニュース2009.11.15


 アメリカの、戦争に対する厭世気分が蔓延しそうだ。
 
 軍事基地内での軍医による銃乱射事件はオバマ大統領の訪日日程にも影響を及ぼすほどの衝撃をあたえた。
 
 アメリカ兵の命の価値はイラク戦争時の死傷者の数から類推すると、たぶん一対百位だとは思うが、アメリカにとって大切なことは、そのような比率などではなく死傷者の数そのものであるに違いない。ベトナム戦争と似通った様相を呈してきた。支援した南ベトナムは腐敗しきり、それでもなお人命と財産の支援を続けなければならなかったアメリカ。今のカルザイ大統領の不正選挙にみるまでもなく腐敗は相当な段階に達し、国内ではなんの支持も得られない状況にあるようだ。ただアルカイダ対応政権としての存在価値しか認められてはいない。そんな政権をアメリカは支援し続けなければならないジレンマを抱えている。
 
 戦争のなかにもヒューマニティを温存せざるを得ない現在の戦争は高くつくもののようだ。13世紀モンゴル帝国、21世紀のアメリカをはるかに凌駕するそのモンゴル帝国の報復主義的攻撃たるやすさまじい。最強の隷属民の志願兵からなる「タマチ軍団」がチンギスハンのゴーサインのもと出撃しようものなら10万人都市には数百人の生存者しかいなくなるほどの徹底した虐殺で知られる。現在のアメリカは我が国へ投下した原爆に大量報復虐殺の方向性をちらっと垣間見せたが、それ以後にモンゴル帝国がなした程の徹底さは見られない。
 
 オバマ政権の今後を見るうえで一つのレポートとイギリスでのレクチャーに基づいた記事に注目する必要がある。
 
 そのレポートは、アフガンに赴任していた現役の外交官マシュ・ホー氏の辞表である。この文面のなかに戦争への厭世気分というものを感じ取れる。要は、アメリカ人の生命に値するほどにアフガニスタンに関与する意義があるのかという主張である。ことの根底にはアルカイダがある。そこに対処するには、それは、パキスタンの問題にならざるを得ないし、ソマリアでありスーダン、イエメーンと広がりを持つことになる。信任を得ていない腐敗政権と一緒に行動するアメリカはアフガンの治世、治安に対してどう思っているのだといった叫びである。これは何千人と命を失った兵士の家族の声を代弁する。
 
 もう一つの記事はオバマ政権誕生の直前にニューヨークタイムスに載ったブレジンスキー氏の記事である。「地球規模の政治的覚醒」というタイトル。氏はカーター政権時の国家安全保障のアドバイザーであり、現在は戦略研究機関に所属してオバマ政権の外交方針に多大な影響力をもっているといわれている。この中で非常に驚いたことは、500年続いた大西洋地域の支配は中国と日本の卓越をともなって終焉するという下りである。その後に不安定さを否定しようもないロシアを含むBRICSを重く見ている。なにか、鳩山政権のアジア傾斜を予言するような言及である。アフガニスタンに関しては、アルカイダの存在を除外する条件でのタリバンの一部との和解を示唆している。(NYT:Tuesday,Dec.16,2008)現在のオバマは軍トップからの4万人規模の増派要求に決断を迫られている状況である。
 
 パレスチナ地区へのイスラエルの定住を認めるクリントン国務長官の発言に見るまでもなくオバマは当初のスタンスからは遠のき始めている。