さりげなくニュース2007.3.11


   
イラクを攻撃したブッシュを批判した久間防衛相の発言は我国の離米性を示唆するものとアメリカ側に察知された。アメリカの対応も素早かった。2月21日、チェイニー米副大統領の訪日で久間防衛相との会談は日程からはずされた。これを手始めに米議会からは従軍慰安婦問題で我国に謝罪を求める決議案が出された。
 安倍、外務省谷内正太郎事務次官ラインで進められている一見危ういかに見える多方向外交は対米自立の衣裳をまとっているように映る。かかる方向性をどう解釈したらいいか。
 安倍政権が成立した9月、最初の訪問国はなにはさておきアメリカのはずである。それが電撃的に中国や韓国であった。小泉政権で冷えきった中国との関係立て直しが緊急ということでは理解可能である。ところで9月にブッシュ米国大統領はどんなシグナルを送っていたかといえば、ブッシュはクロフォードの牧場でもキャンプデービットでも好きなところに招待するから夫婦で来てくれと電話をかけてきたと言われている。では正月はと言えばこれまたアメリカ訪問を引き伸ばしNATO(北大西洋条約機構)本部のあるブリュッセルを訪問して演説をぶっている。
 北朝鮮核問題でアメリカは強硬姿勢から反対に舵を切って、北に大きく譲歩しようとしている。北東アジアの安全保障は米国べったりでは限界があり中国との戦略的互恵関係を構築せずにはアジアの安定は得られないといった我国の真意を読み解くことが出来る。 
 イラクに派兵したスペインは早々と兵を引き上げ、頼みのイギリスまでもブレアの支持率急落にともない兵を減少させる決定をくだすことになった。我国の場合は、ドイツと比べてこの派兵に関して国家の品性の違いが見えてくる。ドイツは派兵するにあたっては苦心の末、憲法を変えて派兵したのとは対照に我国は解釈改憲でイラク派兵をなした。なし崩し的国家の素顔を露呈した。たとえ湾岸戦争で金だけだして汗をかかない国家という諸外国からのバッシングというトラウマを差し引いても戦後我国が築きあげてきた平和主義の危うさを感じ取れる。このことはアメリカとの関係で我国は基地の縮小や地位協定の改定も一切要求することもなく主権と主体性の回復に努力しなかったことに見てとれる。ただアメリカの世界戦略に共同歩調をとるだけの国家が諸外国からいかに軽蔑ものかといぶかる向きもある。久間防衛相のイラク攻撃非難発言はこのような行間で読み解くことも可能だ。
 確かにブッシュのアメリカは指導力、理念性、正当性いずれをとっても国際連盟構想のウイルソンや国際連合のルーズベルトに比べても一介の田舎カウボーイに見えるそれに、今後のイランを視野にいれた対応に超過密になり北東アジアにはかまってはいられない状況を感じ取ったとしてもアメリカをのけ者にしての東アジアをアメリカは一番嫌うのは我国のリーダーは十分認識しているはずでもある。
 中国とロシアの近隣諸国をつなぐ「自由と繁栄の弧」構想を先頃麻生外務大臣がぶちあげたが一見中国、ロシア封じ込めとも見える方向の真意をいぶかる向きもでてきた。