さりげなくニュースNo.242

中国国家主席習近平の怒り

習近平、中国国家主席の怒りは、経済の下降にある。共産党一党独裁体制の存立意義は、なにも歴史的に補強されたものではなく、ただ、人民に飯を豊かに食わせうるというところにある。

 そう見てみると、この政権基盤はなんとも脆弱に見えてくる。ここに、中国の強権と、焦り、行動パターンが見えてくる。

 先頃の上海証券市場での事件は、政権中枢部の肝を冷やしたであろう。上海総合株価指数は下落して、三週間にして、2兆4000億ドルを失った。

 中国の危うさをこれほどまでに見せ付けたものは他になかった。

 それにしても中国企業のかかえる債務たるや、アメリカの規模をも超え、最大である。その額たるや16兆1000億ドルに上り、GDP比160%である。アメリカの二倍である。2019年には、28兆5000億ドルになると見積もられている。

 ところで政権基盤を脅かす要因には雇用問題が深く関わってくる。中国には失業者がいないのだろうか。

 失業率は4.05%と言われている。成長率を7.5%から7%に下方修正しても、失業率に大きな変動が無い。これは、統計の取り方と密接な関係にある。アメリカの場合は、仕事を探す意欲をなくした数をカウントから外しているため失業率は低くなっている。中国の場合には、出稼ぎ労働者や農村部を統計から外している。また、成長率にあまり左右されない理由として、国営企業が経済効率以上に労働者を吸収していることが言われている。

 習近平の怒りはこれだけにとどまらない。経済における三位一体の要素が同時にうまく行くということがないからだ。あちらをたてれば、こちらを捨てなければならない。今市場においては、中国から資本逃避がおこっていることだ。ここ7週間で190bnドル(日本円にして約23兆円)が逃避している。金融政策として、この5月に預金準備率を1%下げたばかりである。市中銀行から強制的に預かる金利を緩めて市中金融の流動性を高める方策である。それとは別個にこの度、中央銀行は、開発銀行に対して160bnドルの資金をつぎ込んでいる。

 これでも習近平氏の怒りはおさまらない。まだ通貨政策というものがある。対ドル6元から、8月現在6.45元と2%ばかりの元安のデバリューションである。まさか、いつか来た道でもある、輸出ドライブに回帰して、景気浮揚につなげたいと言うものではあるまい。デバリューション政策は、相手国への窮乏化政策でもあり、失業の輸出でもあり、相手国の犠牲の上に成り立つ自国可愛さのの利己的政策でもある。ただ破綻国家がこの政策で甦った例もあり、一概に悪いとも言い切れない。ギリシャは支援されることで落ち着いたが、このデバリューションという手も、生き延びには残されてあった選択肢である。

 対立派閥の有望株を次々に刑務所送りにした習近平氏も安泰ではありえない。派閥闘争は、わが国では想像もつかない陰湿さとシビアさを含んでいることは想像に難くはない。

2015.8.30 by K.Wada

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