「お向かいさん中国、されど中国」
2014.5.31

 

       By kiyoaki Wada

 中国が内需を拡大して、世界経済を引っ張ると期待されたのはつい昨日のことだ。
 
 今の中国には、その頃の面影は無い。GDPの伸び率は、昨年までに渡って0.4%から1.4%まで落としている。そのことはGDPの成長率は7.4%まで落としていることを意味する。
 
 高利回りの資産運用商品でもある理財商品のデフォルトを初め、不動産価格の低下。バブルは弾けた観がある。
 
 人民元は今年3月26日に対ドル最安値をつけた。6.1475元である。それが5月23日時点では、もっと下がって6.2365元となっている。
 
 中国の経常収支黒字は2007年のGDP比10%から現在2%に減らしている。このことは、もろに外貨準備高に影響してくることになる。
 
 中国は約3兆4千億ドルの外貨準備高でドルを積み上げてきた。
 
 元を売ってドルを買う。元安に誘導できる。そのドルで米国債を積み増すのか、それとも他の資産購入に充てるのかは、基軸通貨ドルすなわち米国の覇権がからんでくる問題でもある。
 
 工場渡し価格が連続25ヶ月落ち込んでいる状況下、中国経済はまちがいなくデフレへ向いている。
 
 このデフレを諸外国にどのように輸出するのか。その影響をもろに浴びるのは南ヨーロッパの国々である。
 
 中国がデフレから脱却するためには、中国元を低く保って輸出に精ださなければならない。近隣窮乏化政策である。"BEGGAR THY NEIGHBOUR POLICY"。わが国も似たような政策を続けている結果、韓国や中国経済にそれなりの影響を与えてきたことは事実である。中国が似たような事をしたからといって、非難できるものでもない。ただ、中国の内需の減少は、アジアの国々、とくに中国との密接な経済関係にあるASEANにとっては死活問題である。
 
 インドネシア、タイ、マレーシアの三国でASEANのGDPの七割を占める。その中でもインドネシアの貿易量の輸出の四割は中国である。他の二国についても二割強が中国への輸出である。
 
 心情的には毛沢東の統治に近い習主席は東シナ海を手中にして太平洋への出口を確かなものにする戦略を定めた。政治的主導の独裁をめざすのか、あるいは、軍部独裁の上に乗っかかった独裁を目指すのか、いずれにしろ、最終的なところは、台湾の併合にあることは確かである。
 
 中国としては、台湾の併合の前に、クリミヤのような手法での独立投票だけは断じて容認できないところだ。併合のための投票なのか、独立のための投票なのかの違いこそあれ、台湾の独立のための投票行動だけは中国としては避けたいところだ。それをやられてしまうと、中国による軍事併合の正当性に意味づけがなされなくなるからだ。
 
 中国は尖閣問題では、米国が全面に出てきたこともあり、矛先を急激に南シナ海に向け始めた。
 
 石炭、石油の宝庫である新疆ウイグルの地での爆弾騒ぎで、漢族に対するウイグル族の存在が世界の目線に上り始めた。
 
 先頃、アジアの安全保障を話し合う会議が行われた。中国とロシアの利害は領土拡大と戦後の歴史認識で一致したかに見える。
 
 今後、わが国はどういう舵取りをなしていくのか、熟慮した対応が迫られそうだ。