「ウクライナ、内戦から遠のく落としどころ」
2014.4.27

 

       By kiyoaki Wada

 

 4月17日ジュネーブにおいて、米欧露ウクライナによる四者協議が行われた。
 
  ウクライナ問題でウクライナ政府は武力による鎮圧を行わない替わりに、反政府勢力の武装解除を行うという合意がなされた。他にロシア側の要求としては東部のロシア系住民の自治拡大のための憲法改正をおこなうこと。一方ウクライナでの大統領選挙に反対しないことに合意した。
 
  ウクライナは内戦に移行しうる兆しも無いわけではなかった。東部のロシア系住民をテロリスト呼ばわりしアメリカから軍事支援を仰ごうと試みた。しかしアメリカは武器以外の医薬品や軍用食などに限り、内戦へと進む軍事援助はしていない。それに、ウクライナの地上部隊はエネルギー、バッテリー切れなどといった戦う体をなしておらず敵側に寝返る体たらくぶり。戦闘機やヘリコプターを低空で飛ばしては見るもののなんの成果もあげられないでいた。
 
  今回のクリミヤ併合から始まって、ウクライナ東部へのロシア軍の侵攻が現実のものとなったとき、真っ先にオバマ大統領の脳裏をよぎったものは、ヒットラーによるズデーデン地方への進撃であろう。背景が非常に似通っている。ヒットラーをプーチンに置き換えていたのかもしれない。
 
  ボヘミヤのズデーデン地方にはドイツ人が多く住んでいた。彼らの自治を求める政治運動にチェコスロバキア政府は脅威を感じて、公務員からドイツ人を締め出した。今回のウクライナ問題では、ウクライナ右翼暫定政権は公用語からロシア語を外すことをした。ロシア系住民のためにプーチンは動き出した。
 しかし欧米は、他国への侵略という匂いを感じ取った。
 欧米は核戦争に匹敵する持ち球を持っていた。これはイラン制裁で実証済みのものである。
 2011年アメリカの圧力に屈してEUのなしたものは、イランを世界経済から排除したことであった。
 
  世界には世界の金融機関が安全に取引する為のシステムがある。国際銀行間通信協会SWIFTである。ここから排除された銀行、国は、世界経済から排除されたことを意味する。現物の取引のため国境まで出かけていって現金取引をするか、闇取引をせざるを得ない。
 

  イランは翌年には財政赤字が400億ドルに達し、イラン リラは下落し80%切り下げられた。
 
  ロシアとイランでは経済の規模が違いすぎる。核爆弾に匹敵するSWIFTからのロシア排除は、リスクがあまりにも大きすぎる。この冬、ドイツやイタリアは暖房エネルギーの配給制に耐えうるだろうか。また、ロシアからの資金をたっぷりと受け入れているイギリスは、自国の損害に目をつぶり最強の経済制裁に加担するであろうか。フランスは、ロシアとの軍需取引が活発である。それらへの影響は制裁国の足に銃を打ち込むに等しい犠牲を強いるものとなる。
 
  そこで問題となるのは、落としどころである。
 
  ここに一人の役者が登場することになる。今まで汚職の罪で監獄に繋がれていた元首相ユリア・ティモシェンコ女史である。大統領候補として一躍時の人となりつつある。彼女は反露団体側に所属してはいるもののプーチンとは相性が良く、これまでもロシアとの関係を良好なものとしてきた実績がある。
 
  犯罪者途上の者が大統領に躍り出るとしたら、その評価は、賛否が分かれそうだ。