「移民アラカルト」
2014.2.28

 

       By kiyoaki Wada

 2月9日、スイスで国民投票が行われた。移民を規制することについての投票であった。結論は、50.3%の小差で規制に賛成するが上回った。これによって政府は3年以内に法制化する義務を負うことになった。
 

  スイスという国はヨーロッパのなかでも一、二位を競うほどに多くの移民を受け入れてきた国でもある。人口800万人の実にその23%が外国人である。
 スイスはEUには加盟していないがEUとの独自の協定によってEUからの移民を受け入れてきた。その中でもアルバニア、ボスニア、トルコからの移民は多く、人口の20%に達しようとしている。
 
  移民ということで問題にしなければならないことは、受け入れ側のアイデンティティーと切っても切れない点である。あれやこれやのものを失ったら、受け入れ国そのものが国ではなくなるといった、譲れない一線がある。だから、ただ労働力が欲しいからという理由だけでは受け入れられない。
 
  移民政策は、労働、教育、社会保障と横断的部門に係わる問題を秘めている。また、政治的にそれに取り組んだからといって点数にはなりにくいので、政治家は率先して動こうという姿勢をみせないという嫌いも指摘されている。
 
  労働力という点から、背に腹はかえられない面がある。ドイツ、シュレーダー首相当時の2000年代、IT技術者が不足したために、簡素なやり方で受け入れを行ったということがあった。グリーンカードを発行してIT技術者を受け入れた。現在、ドイツは730万人の外国籍の人々がいる。一方でわが国は移民の受け入れにはハードルが高い。産業界からの要請には、ブラジル移民を中心に研修生という名目で、単純労働力を受け入れている。外国籍登録者は200万人がいて、人口比は1.6%にあたる。
 ドイツでは以前、永住権を与えるための審査を合理的に行おうとして、点数化を取り入れようとした。移民の申請者に対して、学歴、職歴、年齢、語学力などを点数化、一定の基準に達したものに永住権を認めようとした。しかし、一部の党派からの大反対で流れたという歴史がある。

 現在、EU内での人の動きは自由である。就職に関しても障害はない。ただ、EU内の国々の間でも失業率がてんでばらばらであるため、受け入れに対しては時限的措置がとられてきた。それは、遅れてEUに加盟した国々からの移民については、一定期間受け入れの規制をしてもいいというものだ。そんな中受け入れにオープンな国としてはイギリス、アイルランド、スウェーデンという国があげられる。
 ポーランドという国はヨーロッパへの出稼ぎが盛んな反面、ウクライナから多くの移民を受け入れている。
 
 わが国の人口動態から推し量るとき、人口減少の波は、大津波に匹敵する。遠い100年後には、明治維新の時と同じ3,000万人の人口になるというのはさて置いても、毎年30万人近い人口減少に見舞われている。40年後には、8,000万人の人口になることが確定的に予想されている。それは国の生産性が30%減少した姿を意味している。現在の社会とはがらりと変わっている可能性がある。
 
  近々の課題は労働力人口の減少にともなう生産活動にどう向き合うのかという問題に直面することになる。