さりげなくニュース2012.5.13


   スペインの経済危機は数字上の危機から目に見える危機に移行し始めた。大通りは、瓦礫の山と化し、蹴散らされた若者の後に残されたものは、警備のための機動隊員の姿だ。4月になってAP通信は生々しい映像を発信してきた。
 ギリシャの危機がヨーロッパに与える影響ということが、散々に叫ばれたのはつい昨日のことである。ところがスペインにいたっては、経済規模がギリシャの沙汰ではない。その影響たるやメガトン級である。
 
  そのスペインでは、通貨や、借金がどうのこうのと言う前に民主主義を守ることが先決になりつつある。
 ドイツが主導して、財政赤字をここ2年以内に8.5パーセントから3パーセントにしなさいという緊縮の通達は、スペインに重くのしかかっている。経済理論に精通したものでも、この自己を破滅させずには置かない、緊縮型締め付けを要求する、ドイツにたいして、この気違いと叫びたいはずだ。 スペインの12月の生産高は昨年比3.5%の落ち込み。1月になると4.3%、2月には、5.1%と留まることを知らない。耐久消費財は、ここ6ヶ月間連続の落ち込みで下落率は14.8%におよんでいる。彼らは、マネーでの刺激策もとれず、あるいは、自国の通貨の価値を下げるデバリューションの手法を使って輸出を伸ばすこともユーロという統一通貨を使っているから出来はしない。俺たちに死ねと言うことなのかと叫びたいはずだ。それに対して、ドイツは自業自得だと言い切れるか。
 
  それにしても失業率は23.6%に達している。この数字はユーロのスタイルで計算した数字で、昔ながらのスペイン方式によると32%の数字となる。
 
  内務省としては、都市型ゲリラ対策を講じることを迫られつつある。経済危機はつとに政治問題化になりうる要素を秘めている。
 
  このようなことは、ひと事ではない、無駄遣いする国が襟を正さないで、安易に取れるところから税を取ろうとする、わが国の消費税論議にも言いえる。国家権力を行使する者たちがノブレス・オブリージュ(
高貴なる者が高貴なる精神をもつ)の精神で事に当たらないとするならば、さ迷える民がどうして一致団結して生産力向上に邁進できようか。
 
  話を元に戻す。スペインについでイタリアも重症患者の仲間入りにノミネイトされている。千年の栄華を誇ったヴェネツィアの展示会が宮城県美術館で開催されている。ゴールデンウイーク一日の入場者数は約三千名であった。
 
  貴族たちが世界の富の過半を我が物にした優雅さをこの展示作品から感じ取ることが出来た。18世紀風景画家カナレットの風景画の前にたたずみ、日本人はなにを感じ入ったのか。庄内に住む者ならば、今井繁三郎に思いを馳せたかもしれない。
 
  話が横道にそれる。今井繁三郎美術館には、20号の月山と鳥海山を描いた二つの絵が入り口に掲げられている。たぶん、この美術館で一番に高価なものなのかもしれない。そこを通り過ぎ、どんどんと二階に進んでいくと、セザンヌの色彩の世界と、ピカソのキュービズムにシンパシーをいだかせるような図柄を見出すことになる。画伯が16歳まで過ごした庄内の風土が、雪の描写の中に、あるいは、デフォルメされた事物の中にきっとあるはずだと、絵の前にたたずむことになる。まるで恋人に会いに行くような気持ちだ。話を仙台に戻す。
 
  ゴールデンウイーク終了日までにヴェネツィア展を訪れた人は5万人を突破した。
 ヴェネツィアの記憶が覚めやらないうちに今井繁三郎を訪れるのは、とてつもない贅沢なことかもしれない