さりげなくニュース2012.12.16

 
 シティーバンクのチーフエコノミストであるBuiterという教授は2013年とそれ以後の経済展望をだした。アメリカ人の銀行家がよその国の経済を悪し様に言うのはわかるが、オランダ人であるブイター教授が皮肉的に言う言動には一理ある。ヨーロッパ経済の死は早まっているとか、フランスは2016年までには死んでいるとかの発言である。
 
 ユーロ圏を率いているのはドイツ、メルケル首相である。そのドイツの成長率予想は低迷である。来年の0.5pc、2016年の1.1pcである。加盟国のギリシャをはじめイタリア、ポルトガル、スペインと公的債務問題に頭を悩まし続けている。
 
 EUの基盤を強力にするため、メルケルは、EU予算増額を企てている。これに断固反対しているのがイギリスである。イギリス、キャメロン首相とメルケルは相性がそれほどに悪くはないのだが、メルケルは、きっぱりと言ってのける。EUを脱退したいなら引き止めませんよ。どこかイギリスの、鉄の女サッチャーに似てきましたね。
 
 EUの条約は従来だと全加盟国の同意が必要であったが、今は緩やかになり加盟国17カ国のうち12カ国が批准すれば発効することになる。イギリスが予算増額案にいくら反対しようがどうしようもない。
 
 イギリス国民の半数以上がEU脱退に賛成しているがキャメロンの心中は穏やかではない。前首相のブレアがブッシュのプードルになろうともアメリカの陰にいながらの自国の立ち居地を置いてきた。今のキャメロンは、オバマの番犬と言われながらもオバマの顔色をうかがっている。
 かつての覇権国家イギリスは、アメリカの懐深くに食い込んでアメリカを操縦しながら自国の生き残りをかける戦略であった。そのことは、情報機関もすべて差し出して嘘と知りながらイラクの大量兵器存在を肯定してアメリカに尽くした姿に現れている。今キャメロンは、孤立の道を選ばざるを得ないのか苦渋の決断に迫られている。
 
 アメリカにとってのイギリスの存在価値はアメリカとヨーロッパを繋ぐものとしての重要度である。EUから離れたイギリスなどなんの価値もない国となってしまう。(話は脱線するが、イギリスも島国、日本も島国。どこか、思考的に似通ったものを感じさせてくれる)。
 
 オバマは二期目を迎え、ブッシュのなした戦争を終結させることに第一の主眼がある。経済にすべての力点を置こうとしている。ということは中国と我国に視線を向けざるを得ないことを意味する。ヨーロッパは回復するにはまだ時間がかかる。
 
 中国は2010年代終盤頃には成長率が5pc台になっていようが、2025年には名目GDPでアメリカを凌駕する。アメリカがアジアに目が向くのは当然である。
 
 我国は失われた10年と言われてきているが一人当たりのGDPの伸びは5pcと今後のヨーロッパの3pcよりは大きい。アメリカはリーマンショック以来2017年までには10pc近い伸びが期待されている。最近のアメリカの好材料は、ガスエネルギーの低廉化により製造業が自国に戻ってきていることだ。これは、中国の人件費高騰という原因も一つの要素となっている。グローバリズムの流れがひと段落つき、国内の雇用問題が重要な経済価値として見直されてきている証左なのかもしれない。
 
 ところでBRICSの動向はいかようか。マーケットブームは今なお続いてはいるものの、それは地味なものになりつつある。BRICSの一員であるブラジルのGDPは2017年にはイギリス、フランスを越えると見られている。