さりげなくニュース12/4

   「東アジア共同体」構想、初めての首脳会議が十二月十四日、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれる。マレーシアのマハティール前首相が提案したEAEC(東アジア経済会議)から15年が経過してのことだ。この会議はアメリカの反発で一発ノックアウトされた経緯を持つ。時代環境が変わったのか、今回に関してアメリカは表立って反対していない。
 世界はEU(欧州連合)の経験を持ち、アメリカはNAFTA(北米自由貿易協定)という11兆ドル規模の域内貿易圏内を有している。
 EUにしろNAFTAにしろその恩恵は認識されてきた。国レベルの競争力の弱い産業から強い産業への産業構造の転換がなされ、また地域経済圏は関税の撤廃や諸制度の調和を通じて域外との取引よりも域内の取引に有利という力が働いているという状況がでてきた。アジア共同体構想が動き出した背景には、このような認識の共有が出てきたと考えられる。
 よくぞここまで政治的意思を含んだ共同体構想に発展したのか意外だと思う向きが多々ありそうだ。97年タイのパーツが急落しアジア経済危機に立ち至ったとき日本が音頭をとってIMF(国際通貨基金)の援助を待っていてはタイミングを失するという考えのもとアジア通貨基金構想を打ち上げたが中国とアメリカの反対で潰されたという経験を持つ。共同体的な思考は日本においては、大東亜共栄圏の悪夢が横たわり、中国にいたっては華夷思想という中国中心の世界秩序がある。アメリカにとってはアジアにおける覇権の問題が横たわっている。
 一方、経済的観点からの経済統合は事実上進んでいるという実態がある。2002年で域内貿易依存率は四十%を超え、現在ではEUの六十%に近づいているというのが実態である。ただEUとの違いはアメリカへの依存度が強いということと、先進国同士の水平的産業内貿易ではなく日本は中国に部品を提供し、中国は組みたて、それをアメリカに輸出してアメリカの貿易赤字の急増という数字に表現されているといった垂直的産業内貿易だと言われている。
 東アジア共同体、ASEAN(東南アジア諸国連合)10ヶ国プラス3の中国、日本、韓国であるが、中心はいうまでもなく中国と日本である。歴史問題で中国と日本は冷え込んでいると言われるが、アメリカと中国の覇権争いに比べたら瑣末な事に違いない。
 非常に注目すべきことがこの七月に起こった。マラッカ海峡のパトロールに協力依頼したラムズフェルド国務長官に対してインドネシアとマレーシアは断っている。 最大の石油輸入国の中国にとってマラッカ海峡はそれこそ生命線である。ここを制しているのがアメリカである。これだけのことができるのは在日米軍基地があるためだとはアジアにとってもアメリカにとっても共通の認識である。