さりげなくニュース2011.9.25

   スマップの中国公演が行われた。観客動員数は4万人という規模であった。温 家宝首相の歓迎を受け、隣には程永華駐日大使の温和な、見慣れた顔もあった。 外務省が束となってかかっても、かなわないような外交に見えた。  



わが国の奥様連中を虜にした韓ドラブームでの韓国が、冬ソナ外交で点数を稼いだ ように、あわや、スマップは、中国の若者層の心を大量にとらえたかと、一瞬思って しまう。それほどの熱狂であった。スマップに熱狂する若者の姿に貧富の格差が激しい、 中国という国の弱点が、かすんで見え出した。  



温家宝が全面に出てきた光景に、日中関係は、まだまだ修復がきくのではないかと 思えてくる。わが国の心情は、アジア人を軽蔑し、一つ下等な国民とみなす癖があ る。欧米人をなにか、崇高な人種であるような思いにかられてもいる。これが戦後 からずっと続いてきた意識である。これは、あたかも知的な世界で、ドイツの(その 後はアメリカの)翻訳文化を特上なものとして、アカデミズムを席巻したような、わが 国の癖に相当する。前置きが長くなった。  



この七月に中国で特筆すべきことが起こった。地方政府との第三セクターである投 資会社の地方債を政府系銀行が引き取らないという珍現象が起きた。債券市場に 動揺が走った。地方の債務は相当巨大なものになってきているのではないかという 心配である。
 



先ごろ中国の会計検査院が発表した数字によれば、債務総額は10.7兆元、日本 円にして約130兆円である。米格付け会社であるムーディーズでは、それに3.5兆 元上乗せした数字と見ている。。その数字はどれほどの規模であるのか。  


中国のGDPは、為替レート換算で6兆ドルである。購買力平価PPP換算では、10 兆ドル。(ちなみにわが国は、5.4兆ドル、PPPで約4兆ドル)。中国の地方債務は GDPの37%になる。(為替相場を1ドル75円で計算)。  


中国がまだまだびくともしないのは、アメリカへの債権が推定2.2兆ドル(約165兆 円。わが国の税収入の3倍に相当)。きわめつきは、世界のGDP74兆ドルの6%に あたる蓄積があることだ。これはかつて20年代アメリカ以外に経験したことがない 数字である。余談になるが、なぜこれほどの富を中国は蓄積できたのかという純粋 < な疑問である。これは、世界で唯一極端な、GDPにみる為替換算の数字と、購買 力換算の数字の、乖離にそのヒントがありそうだ。  


中国は重商主義的方向でアメリカを攻め込んだ。安い人件費から作られる製品を武 器に、がんがんとアメリカに物を買わせた。アメリカは自国で物づくりなどしなくても 良くなった。その結果産業は空洞化していった。その当然の報いは高失業率となり 、人身は荒廃し、若者の教育水準は、壊滅的な状況に差し掛かってきている。打つ 手のないオバマは、アメリカのゴルバチョフと陰口をたたかれてもいる。  


このままでいくならば、アメリカは、保護主義へと行かざるを得ない。しかし、当の中 国国内の人件費は高騰しだし、世界の工場としての魅力が減じ始めている。だから といって、いま今、成長率が9%台から一気に落ち込むというわけではないだろうが、 何十年も一人、勝つというものではない。そのとき、東アジア経済共同体構想は、一 気に具体化するのかもしれない。わが国の強み、巨大市場等の中国の強み、そこ に、統一された朝鮮経済が加わる。