さりげなくニュース2011.8.28

 日本ではお盆真っ盛り、灼熱に、電力不足に心配している頃、お隣の中国では小さな事件があった。
 
 アメリカ副大統領のバイデンは、中国を訪問していた。
 
 現在アメリカと中国の間に立ちはだかる問題は、特段、差し迫ったものは見受けられない。ただ、中国はロシアから譲り受けた航空母艦を建設したということがある。本格的に海洋への進出を目指し始めたかのようだ。
 
 今回のバイデンの訪問は中国の不安を払拭するためのものと見られている。アメリカ経済は、先ごろの債務不履行寸前の幕引きの前に、ほんとうにだいじょうぶなのだろうかという不安を、全世界に与えた。極め付きは、米国国債のトリプルAからの転落であった。戦後初めてのアメリカという国の実力が、陥落した一瞬であった。
 
 中国は1.16兆ドルの米国債の所有者である。わが国を超して最大となっている。
 
 アメリカとしては、最大の債権者に対して、アメリカ経済は大丈夫だということを説明する義務がある。アメリカと中国は、いまや、一蓮托生の間柄のように見える。アメリカの消費によって中国経済は飛躍的な発展を遂げた。ドルを買い支えることによって、アメリカが多くのものを中国から買ってくれることが中国の繁栄であった。わが国がアジアの戦争特需で一気に経済飛躍を成し遂げたものを中国は平和時にて、それを成し遂げた。
 
 こういう両国間でのバイデンの中国訪問であった。中国オリンピックスタジアムでは、バスケットの試合が行われていた。今回の訪問のエグジビジョンとしてである。対戦相手はジョージタウン大学と中国人民解放軍選抜のチームによるものであった。
 
 残り9分の最終コートで乱闘が始まった。中国側のプレイヤーは椅子を振り上げてもいる。コートを後にしたアメリカチームに観客席からペットボトルが容赦なく投げつけられた。
 
 今後の米中関係に、何かを暗示してはいないだろうか。
 
 ここで、中国に温かい視線で交渉にあたったキッシンジャーが思い出される。中国外交の隅々まで熟知したキッシンジャーは、時のニクソン大統領を訪中に結びつけた。周恩来のリップサービスは絶好調に達する。アメリカの200年の歴史に比べて中国はたったの20年でしかないと、お世辞を言う。
 
 今回のバイデンの交渉相手は来年、主席に内定している習近平であった。
 
 アメリカお得意の人権外交で中国にジャブを入れに来たわけではない。バイデンは、中国に怒っているわけではないのに、バスケットチームは、なにに苛立ったのか。乱闘動画を見る限り、並みのそれではなかった。
 
 これは、今後の米中関係に何かを象徴するのか。
 アメリカは、これまでのように東アジアに関与出来るのか。経済的負担に耐えうるのかと言い換えることが出来る。
 
 中国の経済成長が今のペースで持続し続けるなら、多くの東アジアの国々は中国の元に収斂していくことが考えられる。これまで、アメリカ側に属してきた東アジアの大国である、わが国と韓国は、どういう方向に向いていくのかは、アメリカの東アジアへの関与次第ということになる。政治が劣化したわが国に、選択肢はない。