さりげなくニュース2011.5.29

    リビアのカダフィー大佐は、NATO軍の空爆に現在もさらされている。イタリアの外務大臣がカダフィーは空爆で負傷したと発表した。それに対してトリポリは、全面否定している。
 
 リビア国営テレビ局は、カダフィーの談話として、臆病なクルセイダー(十字軍騎士)は、決してこの地に到達することは出来ないであろう。それに対してNATO同盟は、カダフィーの排除まで徹底して空爆を続けると宣言している。
 
 石油の安定供給のためには、独裁政権に目をつぶってきたアメリカの中東政策は、ここにきて、大きく転換を余儀なくされようとしている。ただ、オバマの言動を見ていると、石油の生産国と、そうでない国との違いが鮮明になっている。エジプト、チュニジア、バーレーンに対するのとサウジアラビアに対するのとでは全然違う。また、反米的なリビアやシリアに対するのと、クウェート、アラブ首長国に対するのとでは、叫び方に違いがある。同じ民主化であっても、好ましい民主化、好ましくない民主化の違いがあるもののようだ。
 
 アメリカの、何はさておいても、優先順位第一位は、イスラエルの安全ということに異論はないであろう。ここにきて、オバマがイスラエル、パレスチナ和平に関する重大なスピーチをこの19日になした。1967年第三次中東戦争以前の領土分布に立ち返るべきと言う提案であった。一見イスラエルには、到底認められない譲歩を迫る発言であった。これは、どう読み解けばいいのか。額面どおりは、とても受け入れがたい。彼特有の核廃絶宣言のような立ち居地と考えられなくもない。
 
 イスラエルのエレサレムや、西海岸への入植は30万人規模で進んでも居る。その現実を直視せずに、現実の具体的解決方策をも示さずに、重要な発言だけが一人歩きしだす。ここまで、アドバルーンを上げざるを得ない中東の民主化は、一人国内問題におさまるものではなく、近々に、イスラエル、パレスチナ問題へと飛び火する恐れが現実味を帯び始めたのかもしれない。
 
 アラブ世界では誰もオバマの発言をまともには受け止めては居ないのが現実である。 9月にパレスチナ国家承認の国連議決が日程に上っている。ここでも、アメリカ、イスラエルの孤立化は避けたいところである。それへの布石を今から打っておくという見方も、まんざら戯言と捨てきれない。アメリカにとってイスラエルの安全が最大の優先政策だからだ。イスラエル国家を否定している、選挙で選ばれたハマスを一切、交渉相手として認めていない姿勢に見るまでもない。
 
 40年間石油のために、専制政権に目をつぶってきたアメリカの中東政策は岐路に差し掛かってきている。オペックの中での最大の石油生産国サウジアラビアは、アメリカに対して、強い不信感を抱いている。エジプトのムバラクを捨て去ったのは、決して許せるものではない。アブドラは、自らの生き延びをかけて、国内対策に多大な出費が必要になってくる。そのためには、石油はバレル90ドルは維持する政策をとることが予想される。これまでのように、価格が上がると、増産体制を敷き、価格を安定させてきた。今後、このような従順な姿勢は、サウジに期待できないとすれば、それは、アメリカの中東での、完璧な覇権の喪失を意味している。石油決済貨幣をユーロに変えたイラクとは、意味合いが違う。