さりげなくニュース2010.6.13


  このところイスラエルが自虐的、疑心暗鬼になっている。どこかから、急襲されるのではないのかといった、国民全部が病気にでもかかったような精神状態だ。
 5月31日ガザ地区に向かったトルコ人乗組員の支援船が、イスラエルに拿捕された。死傷者もでた。国際非難の大合唱にもかかわらず、今月の5日、再度別の支援船を拿捕した。
 
 シリア製スカッドミサイルが、ヒズボラの手に渡ったことが、イスラエルにとっては、相当な衝撃であったに違いない。ヒズボラといえば、レバノンのなかで、連立政権を組むといった合法性を有している反面、イランなどから支援を受けて、イスラエルに徹底抗戦をその主張としている。アメリカやイスラエルに言わせればテロ集団ということになる。先のイスラエルとの戦いでは、戦争には負けたが、政治的には勝利し、実質的に勝利した。そのヒズボラに、より強力なスカッドミサイルが渡ったことは、イスラエルを神経衰弱に陥れるに十分な効果があったと考えられる。アメリカはさっそくシリア制裁に乗り出した。2004年から実施中の経済、外交における制裁をリニュアルして、その制裁を更新した。
 
 イスラエルの非難の矛先は、シリアに向けられる。年間150億ドルの軍事予算を有するイスラエルが60億ドルの軍事予算を持つシリアに当てこする。イスラエル外務大臣アビグドル・リーバーマンの言葉として「18ヶ月間干ばつで何百万人も苦しめられているのに、この軍事予算は無駄遣いもいいところだ」(guardian,Wed 19 May 2010)

  シリアは、武器をロシアから入れている。ロシアのグルジアへの軍事介入の時、イスラエルがグルジアを支援したことと相まって、ロシアは、シリアへの武器輸出を活発化させた。ミグ29を初め対空ミサイルまで、武器支援協定が結ばれた。ゆくゆくは、原子力協定までも視野に入りつつあるようだ。それにともない、対シリアの新たな戦略構築がアメリカに急がれるのは必定だ。
 ところで、米ロは、在りし日の冷戦へと逆戻りするのか。可能性はない。ロシアは、隣接する中国の脅威の前に、アメリカと手を結ばなければならない局面も近い将来、現実化しそうである。
 
 アメリカの一極支配に対抗する意味で、上海協力機構は、中ロの蜜月であった。
 
 今、中国の人口浸透のすさまじさは並外れている。ロシアの極東は人口が七百万人である。それも極端に減少しつつある。一方の中国は、国境沿い三省だけで、人口は一億人である。この地域の膨大な資源が手付かず眠っている。中国人がこの地域に住み込み始めたら中ロ関係は、危機的な状況になるのは明白である。
 
 中国の脅威ということでは、インドは、相当にしんどい状況だ。インド東部のアルナチャール・プラデーシュ州は、一触即発の緊張状態である。
 
 アジアにおける中国一極時代は海洋においても見られる。アメリカがいきり立っているが、日本からフィリピンを結ぶ第一列島線を超え、中国は小笠原諸島からグアムを結ぶ第二列島線へと、外洋に進出してきた。こういう状況で、アメリカの中国封じ込め政策に日本が従わない場合、どんなことが起きるか。米国が東アジアから撤退して、中国の東アジア一極支配が現実のものとなる。
 
 海洋権益への米中対立が日本も巻き込んで先鋭化しつつある。我が国は国益を誤らないように慎重を期する必要がある。