さりげなくニュース2010.4.11


  アメリカはこのところイランの核開発への制裁を急ぎ始めている。経済的な利害関係のあるロシアと中国にあってロシアは従来のようなイラン寄りの姿勢をとらなくなってきているのが目に付く。一方の中国は安保理の中でたった一国であろうともイラン側の立場にたつと言明していた。最近では若干軟化しだしている。
 
 中国に対するアメリカ側のつい先頃の揺さぶりは半端なものではなかった。中国の神経を一番に逆撫でする台湾にも踏み込んだ。何十億ドルという台湾への武器売却を決めたり、また、中国側としては内政問題の範囲内で事を収めたいチベット問題にも踏み出す姿勢を見せダライ・ラマとのホワイトハウスでの会談をなした。アメリカは相当に強気であった。まだまだアメリカの天下は続くような格の違いを見せ付けるものであった。
 
 アメリカが衰退過程にあるとは良く言われていることであるが、これも対比較上でのことであり、まだまだ健在であるというイメージを受ける。
 対、比較という意味合いでEUの体たらく、毅然としたポリシーのなさが最近顕著となっている。破綻国家ギリシャやイタリアの救済を自らの手でなすことを放棄したい考えだ。IMFの手に委ねる方向も視野に入りだしている。
 
 EUの成立の根底にはフランスとドイツの歴史的和解と協調があるとしても、フランスの思惑としては、金主のドイツをいかにEUの中に繋ぎ止めておくかがEUのレゾンデートル(存立基盤)といっても過言ではない。ところが先頃のドイツ首相メルケルは演説でEUよりもドイツ国内の利益を優先すると発言しだしている。それに財政のルーズな国はユーロ圏から除名すべきであるとも言っている。こういう状態のヨーロッパであることから、アメリカが比較的強い、まとまった国に見えてくる。
 
 軍事大国であるロシアの元気の無さはプーチンの強権の減退と比例しているように見える。国内の経済がうまくいっていないためか表立ってのプーチン批判が国内で出てきた。それにプーチン政権の成立基盤はチェチェン問題での強面であった。
 
 3月29日モスクワの地下鉄は17歳の女の子による自爆テロに襲われた。これまでとは違った終わりの無いしかも強力なテロの恐怖にプーチンは付き合わなければならなくなった。
 
 実行犯アブダラエバ(Abdullayeva)は昨年30歳の夫をロシア治安部隊により殺害された。彼女は自爆テロでロシアを攻撃することを決意する。月曜の午前2時頃モスクワにもう一人の実行犯の女性とともに到着。共犯者はアパートを借りていてそこで爆弾の準備をなしていた。8時40分アブダラエバの生命が消滅するまでをマレーシアから来ていた医学生がリアルに彼女の様子を話している。
 
 彼は実行犯の数フィート後ろにいた。スカーフは被っていなかった。目はきっと見開き、瞬き一つしなかった。怖がっているように見えた。当然自爆犯だとは思わず、彼女は精神的に病んでいるように見えた。(NYT:April12,2010)
ロシアはチェチェン弾圧の結果として被弾圧者は独立運動からイスラムのジハードへと闘争の本質を変えてきた。ロシアはこれまで以上に複雑な問題の処理に立ち向かわざるを得ないはめになりだした。
 
 我が国の場合は、政権交代という絶好の自立という機会があったにもかかわらず、従来の惰性の安住の道を選びそうである。
 
 アメリカは比較優位の立場を堅持しそうである。