さりげなくニュース2010.2.28


   アメリカは健在である。銀行への貸し出し金利である公定歩合を引き上げた。ただ失業率が10%に届こうという現状では、零に近い金利は崩せない状況だ。かつて円キャリーが取りざたされたように、安いドルを借りて儲けのあるところにその資金を投資する商売が目立ち始めている。そんな中、中国、元の価値問題で米中間にわだかまりが増しているとき、中国はこの12月に米国債を投売りした。これまで温家宝首相の発言として米国債への懸念が報じられてきていた。ここに至って米国債の保有量の4から5%にあたる342億ドルの米国債を売却した。これによって日本が米国債の保有量ではナンバーワンとなった。中国の7550億ドルに対して我が国の7680億ドルである。
 
 これ程の中国による米国債の投売りにもかかわらず、あまり大騒ぎをしなかった。それもそのはず、英国、香港、ルクセンブルク、我が国が大量に買い増していた。我が国が115億ドル増やし、英国が249億ドル買っている。
 
 中国の米国債投売りの意図するところは持続不可能なアメリカの財政管理への注意シグナルであるという受け止め方が有る反面、そのような中国の行為は、現在米国債を大量に保有している米国債の価値を減ずるもので中国の利益にはならないと言う見方もでている。
 
 「グローバル インターナショナル トランスフォーメーション」の著者であるHo-fung Hungは「中国が米国債を売る長期的戦略を持っているのか判断しがたい」
(guardian Wed. 17 Feb. by T Branigan)

 ここにきて、オバマ大統領のチベットに対する処遇が大きく変化している。かつて、チベットの独立は認められないとの発言は中国に強い自信を与えた。つい先頃中国の反対を押し切ってダライラマとの会見に臨んだ。台湾への武器売却と併せて、中国の神経を逆撫ですることを矢継ぎ早に敢行している。
 
 つい先頃のアメリカであれば、二つの戦争を同時に遂行しうる力量を有していた。だが現在は蜃気楼のようなテロ戦争に明け暮れて国力を衰退し続けている。
 
 台湾海峡の米台による制空権は確保できていないというのが現状である。水際の地上戦では中国が有利と言う結論が出ている。やがてアメリカはグアム以東まで引っ込みソマリア沖までは中国ないしは、インドと欧米が管轄する方向性が見え出している。こういう将来像までを視野に入れての小沢氏の中国との戦略的関係の構築にあったのかどうかははっきりしないが、官僚機構とマスコミのタッグを組んだ、対米従属派が形振り構わずに、小沢つぶしに走り、実質的に成功を見た。これと似たようなことは国際関係でも現に起きている。
 
 インドは次の世界のリーダーの一翼を担う国の一つである。中東からエネルギーを運ぶ生命線であるインド洋は、中国や我が国にとっては、非常に大切な航路である。アメリカがグアムまで引っ込んだ後、ここはインドが安全を確保することになる。
 
 インドが地域の覇権国家になりえるためには、三度の戦争のなかにあったパキスタンとの関係改善が急務なことであるが、一昨年のムンバイでのテロ事件の発生、それに今月13日のテロ事件で両国の会話は中断されようとしている。
 
 アフガニスタンは国土の八割近くをタリバンが押さえつつある。アメリカは来年の7月までの撤退を視野に入れた消化試合のような戦争に従事している。アジアはアジアでの統治という色合いが見えてきた。