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「わが国は20年内外に核保有国になりえるか?2017.5.04

 

 アメリカが北朝鮮に対して軍事攻撃できなかったことの意味は重大である。アメリカは所詮イラク、イラン、キューバといった国々へと戦いを交えるのに精一杯の実力しかないと世界に再度印象づけたことだ。これはわが国あたえた影響は甚大なものであることを意味する。アメリカとの安全保障は幻想にしかすぎなかったのではないかと思い始めても不思議ではない。国家としてのマインドコントロールが解け始める契機となりかねない重大な意味を含んでいる。

 

アメリカの一国強権主義は政治の面のみならず経済の面でも顕著であった。グローバリズムは思考上における構造は理想のモデルを設定してそれを世界に適用しようとする発想である。政治上における社会主義国家スターリンの世界同時革命(正確にはトロッキーズム)の経済版といっても大きな誤まちではなかろう。もっと具体的にいうならば、アメリカのIT革命はステイト キャピタリズムそのものであった。中国も当時も今も政府主導のステイト キャピタリズムである。アメリカはその後ろめたさを隠すようにしかも正当化のイデオロギーをわが国に押し付けていた。民営化というもので小泉政権を翻弄した。そんなことを長らく続けていたら失われた10年どころではなく永遠に立ち直れない停滞に沈み込んでいた可能性がある。

 

安全保障上のマインドコントロールから十分にときはなたれていないときには、その代償は当然に負わなければならない。

 

アメリカの力の衰退は急激に落ち込んできている。とりあえず力を維持しているのは軍事と情報の二点においてである。しかしその情報の根底たるやイラク戦争でイルージョンであることが実証された。これこれの武器とこれこれの戦略であれば勝利できるという確率論に根ざした情報の本質である。それはもろくも崩れ去った。それに、原爆を7千発持っているという抑止力は100発とどれほどの違いがあろうものか。ローマ帝国、あるいはモンゴル帝国の軍事力を頭にうかべてみれば明白である。

 

とてつもなくアメリカがだめな国になってきているのは父ブッシュの保守から過激なレーガンをへてネオコンという世界同時革命者と見間違うほどの左翼に支配された子供ブッシュは出てくるべくして出てきたということだ。そしてもっとも信用を落としたことは、真顔で嘘をつくということである。ここまで、国家が堕落してしまった。

 

だからどうだというんだということになる。隣人に友達もいないのに、では、どの国がおまえの国家の安全保障をまもってくれるんだということになる。たとえアメリカのシステムが崩壊するまでに核の傘に守ってもらうしかないんじゃないかとなる。これはかつての日本の歩んできた道でもある。黒船がきて初めて右往左往する。それまでの準備など何一つしてはいない。どん底まで突き進んでやっつけられて初めて無一文からようやく立ち上がる。

 

アメリカが日本を守るなどということばが死後になるのが20年後なのかあるいは半世紀後なのかは知らない。しかしアメリカのシステムが崩壊するのは近々であることはありえる。そこで、アジアが均衡のとれた関係を保つためには、わが国の核の保有問題を後回しには決してできない最重要問題として浮上するはずだ。核を使用するとかしないとかの問題に矮小化して逃げてはいけない問題となる。核の規模が世界に脅威をあたえないものとして節度の視点は当然問題となりえてくる。